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ひもの張力はどこでも同じになる
ひもが滑車を通して2つの物体を支えている
次のような状況を考えましょう。
結論からいうと高校物理においては
この時2つの物体に働く張力$T$は
まったく同じになります。
さらに張力というのは
次のように
ひものいかなる場所においても
同じ大きさ
になります。
今回は、このように
ひもの張力が
どこでも同じになるわけ
や
ひもの両端の張力が
等しくなるわけ
についてわかりやすく解説していきます!
「ひもの質量は無視できる」の意味
この
ひもの張力は
どこでも一緒になる
というのは実は
普段問題文中に何気なく書いてある
「ひもの質量は無視できる」
という文言によって保証されています。
それをしめすために次のような
質量 $m$、長さ $l$のひもによって
力 $F$でで引っ張られる質量 $M$の物体を考えます。
また、この時ひもは一様な密度を持っているとします。
それではまず、
ひもと物体を
1つにまとめたもの
の運動方程式を考えましょう。
これに働く力はFであり、
その全質量は$M+m$なので運動方程式は
$$\large (M+m)a=F$$
と書くことができます。
では次にひもの端から
長さ $x$だけ離れた位置での張力を考えていきます。
次の図のように
物体と糸の端から $x(<l)$までを1つにまとめ、
また、その張力をTとします。
するとこの部分の運動方程式は
ひもの質量が$\frac{x}{l}m$と書けることに注意すると
$$\large (M+\frac{x}{l}m)a=T$$
と書くことができます。
ここで長さxのひもの部分の質量が
$\frac{x}{l}m$と書けることについて説明します。
ひもの密度を$\rho$と書くと、
長さ$x$ひもの質量は
$$(長さxのひもの質量) =\rho x$$
と書き表されます。
ひもの密度が一様であることから
今の場合、その密度$\rho$は
$$\large \rho=\frac{m}{l}$$
となるので、これを代入すると
$$\large (長さxのひもの質量)=\frac{x}{l}m$$
となります。
ここまでで得られた2つの式を並べてみましょう。
$$\Large (M+m)a=F$$
$$\Large (M+\frac{x}{l}m)a=T$$
ここで、2つの式に現れる加速度$a$は
(同じ物体の加速度なので当たり前ですが)
同じであることに気をつけてください。
これらから加速度 $a$を消すために
2つの式を次のように変形します。
$$\Large a=\frac{F}{M+m}$$
$$\Large a=\frac{T}{M+\frac{x}{l}m}$$
この2つ式をつなげることにより
\begin{align}
\large \frac{T}{M+\frac{x}{l}m}&\large =\frac{F}{M+m}\\
\\
\large T&\large=\frac{Ml+mx}{(M+m)l}F\\
\end{align}
が得られます。
ここで再度述べておきますが
今、上の式は
質量$m$を
持っているひもの張力
を表していることに注意してください。
では
質量をもっていない
ひもの張力
を考えるために、上の式において
$$\Large m=0$$
を代入してみましょう。
すると
\begin{align}
\large T&\large =\frac{Ml+0 \dot x}{(M+0)l}F\\
\\
\large T&\large =\frac{Ml}{Ml}F\\
\\
\large T&\large =F\\
\end{align}
が得られます。
これはxの値にはよりません。
このことから$x$がどんな値でも、
言い換えると
ひものどの位置でも
ひもの質量がない場合には
ひもの張力は同じになる
ということが導かれました。
その結果、物体に働く張力というのは
糸が引っ張られる力$F$に等しくなります。
ひもの両端の張力が等しい理由
では次に、
ひもの両端の
張力が等しいわけ
について解説していきます。
具体例として、簡単のため次のような
糸がたるむことなく繋がれている
2つの物体A、Bを考えてみてください。
(滑車を通して繋がれている
2つの物体を考える場合にも
以下の議論を拡張して
同じことをしめすことができます)
ではこの状況において右向きを正
糸の質量を $m_s$ とし、
糸の運動量方程式
を考えてみます。
物体$A$、$B$に働く張力をそれぞれ
$T_A$、$T_B$と書くことにします。
すると糸に働く力は次のようになります。
ここで、糸に働く力と
物体に働く力がそれぞれの物体で
等しくなっているのは
作用反作用の法則
が理由です。
すなわち、糸は引っ張られた分だけ
引っ張り返すことが原因でこのようになります。
ピンとこない方は要復習です!
糸に対して水平方向に働く力は
$T_A$、$T_B$だけなので
糸の運動方程式は、その加速度を$a$と書くと
(右向きが正であることに注意して)
$$\Large m_s a= T_B-T_A$$
となります。
ひもの質量が0の場合
では、先程の得られた運動方程式において
ひもの質量が0の場合
を考えてみます。
これは、運動方程式に
$m_s=0$を代入すればいいので
\begin{align}
\large 0&\large =T_B-T_A\\
\\
\large T_A&\large=T_B\\
\end{align}
を得ることができます。
このように、
糸の質量が0であれば
糸に働く両端の力が等しいわけなので
糸の両端で2つの物体に働く張力は等しくなります。
ひもの質量が0″でない“場合
ひもの質量が0となる場合には
両端の張力が等しくなることがわかりました。
では、ここからより理解を深めるために
逆の場合、すなわち
ひもの質量が0でない場合
ではどうなるかを考えていきます。
先程と同じように運動方程式を考えると
$$\Large m_s a= T_B-T_A$$
をえることができます。
ただし、今の場合$m_s\neq 0$であることから
この式は、
両端の張力の大きさは
必ずしも等しくならない
ということを表しています。
このように糸に質量があるかないかで
ひもの両端の張力が
等しくなるかどうか
というのは変わります。
このように糸(ひも)の質量というのは
意外にも重要なので
張力が関わってくる問題を考える際には
このことを意識しましょう。
また、今回は話を簡単にするために
水平方向に
糸で繋がれた2つの物体
を考えましたがが、
同様のことは、次図のような
滑車で繋がれた2つの物体
の場合でも言えます。
ただし、この場合には
糸の運動方程式において
糸に働く重力
を余計に考えないといけません。
もし時間に余裕があれば
こちらも考えてみるとより理解が深まると思います。
まとめ
それでは今回のまとめです。
- 質量のないひも・糸の張力は
いたるところで同じになる - 質量のないひも・糸の両端の張力は同じになる!
- 張力を求める際は、まず張力を $T$と置く!
- そして質量が0であることを考慮した上で
運動方程式(つり合いの式)を考えて張力を求める!
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