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重心の物理的な意味
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2020/09/necchusyou_face_boy3.png?w=728&ssl=1)
のような人のためここではまず
重心の物理的な意味
を解説していきます。
言うまでもないですが、通常物体には
「大きさ」があります。
しかし「物理」というものは
大きさが大嫌い
です。
なぜなら、もし大きさがあれば
「回転」だったり「変形」だったりを
考えないと物体の運動を記述できないからです。
皆さんもできれば
変形なんて面倒くさいこと考慮したくないですよね?
回転なんて面倒くさいこと無視したいですよね?
そこで通常物理では
物体を大きさのない
(ただし質量のある)
「点」に置き換える
という作業をします。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/03/pose_shock_man.png?w=728&ssl=1)
え!?
そんな勝手なことして良いの?
と思うかもしれませんが
実は、この点が
重心である場合
には置き換えは許されます。
裏を返せば
質点への置き換えが
許される代表点
つまり
回転を無視できる点
こそが
重心
であるわけです。
そして重心(質点)の運動がわかれば
次のような物体の大まかな運動も
わかることになります。
つまり重心とは
物体の運動を
記述するための代表点
とも言えます。
重心の公式ってなぜあの形なの?
では重心の公式について解説していきましょう。
重心の公式
通常、重心の公式は
$$\large x_G=\frac{m_1x_1+m_2x_2+\cdots}{m_1+m_2+\cdots}$$
とだけ書かれて終わりです。
しかしこれだけ覚えていても
重心が関連してくる問題には対応できないでしょう。
ということで、この公式の
導き方
を以下で見ていきます。
重心の公式の導き方
今、次のような
棒で繋がれた物体
を考えてください。
(棒自体の質量は無視できる)
今この棒で繋がれた物体の
重心を考えていきます。
思い出して欲しいのが、重心とは
回転を無視できる点
であるということです。
そして「回転を無視できる」
というのことはつまり
重心周りのモーメントは
0になる
ということになります。
なので、逆に
モーメントが0となる点
を探せば、そこが重心だと言えるわけです。
今仮に、重心の座標を
$(x_G, y_G)$と書くことにしましょう。
まず$\large x_G$について考えていきます。
それぞれの物体の座標を
次図のように定めることにします。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/11/スクリーンショット-2021-11-03-18.09.50.png?resize=547%2C383&ssl=1)
すると今、$x_G$ まわりのモーメントは0
にならなければいけないので
$$\large 0=m_1g(x_G-x_1)-m_2(x_2-x_G)$$
というモーメントのつり合いの式が得られ、
これを整理すると
\begin{align}
\large (m_1+m_2)gx_G &\large =(m_1x_1+m_2x_2)g\\
\\
\large x_G&\large =\frac{m_1x_1+m_2x_2}{m_1+m_2}\\
\\
\end{align}
と、このように$x_G$が導かれます。
次に重心の$y$座標$y_G$についてですが
これを求めるためには次のように
座標ごと90度回転させましょう。
すると、先程やったように
$y_G$まわりではモーメントが0に
ならなければいけないので
$$\large 0=m_1g(y_1-y_G)-m_2g(y_G-y_2)$$
というモーメントのつり合いの式が得られ
これを整理すると
$$\large y_G=\frac{m_1y_1+m_2y_2}{m_1+m_2}$$
というように$y_G$が導かれます。
そしてより物体の数が増えた場合でも
今回と同様に考えることで
$$\large x_G=\frac{m_1x_1+m_2x_2+\cdots}{m_1+m_2+\cdots}$$
という式が得られるわけです。
「数学の重心」と「物理の重心」で混乱しないように!
物理の重心で混乱してしまいがちな
要因の1つとして
数学における
幾何学の重心と
混同してしまう
というものがあります。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/11/三角形の重心.png?resize=545%2C300&ssl=1)
数学の範囲でも
様々な図形の重心
ということでその求め方を学ぶと思います。
しかしそれらと今回解説している
物理の重心とは(高校物理においては)
関連はない
ということに注意してください。
数学の重心の考え方と
物理の重心の考え方は
全く別物と思ってもらって問題ありません。
重心の求め方~切り抜かれた円盤の例題を通して~
それではよくある重心の例題を通して
重心に対する理解をより深めましょう。
半径Rの円盤から次の図のように半径R/2の円盤を切り抜いた。
Q:この時、残った円盤の重心の位置を求めよ。
この例題をちゃんと解けるためには
重心とは
質量が一点に集まったと
みなせる点
(質点)
また
モーメントが0となる点
であることをちゃんと
理解できているかが鍵となります。
例題の状況を整理すると次のように書けます。
切り抜いた円盤と、もとの円盤は
ただの円なのでその重心は中心にあります。
先程の図から、今の場合
切り抜いた円盤と
残った円盤を合体させ
元に戻した時、その重心は
原点Oにこないといけない
という条件が読み取れますね。
これは、切り抜かれた円盤の重心の位置を
適当な位置に仮定し、
円の中心からの距離を $x_G$すると
次の図のように表されます。
ではこの切り抜かれた円盤の
重心の位置$x_G$を求めていきます。
物体は重心においてのみ
「質点」とみなすことができることを思い出すと
先程の図の右辺はさらに次図のように書けます。
つまり質点を用いて
(重心の公式を導く際に使った)
棒で繋がれた物体
に帰着できます。
ここまでくればあとは簡単です。
合体すると原点が重心になることから
において$O$周りのモーメントは0となるはずです。
そして今、切り抜く円の質量を$m$とすると、
切り抜かれた円の面積は
切り抜く円の面積の3倍であることから
切り抜かれた円の質量は$3m$と書くことができます。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/11/スクリーンショット-2021-11-03-20.42.53.png?resize=509%2C380&ssl=1)
よって、原点周りのモーメントのつり合いの式は、
重力加速度を$g$と書くことにすると
$$\large 0=3mg \cdot x_G-mg\cdot \frac{R}{2}$$
となります。
これを整理すると、最終的に
$$\large x_G=\frac{R}{6}$$
が得られます。
このようにして重心の位置が求めることができます。
まとめ
それでは今回のまとめです。
- 重心とは物体の全質量が集まった(とみなせる)大きさのない点(質点)である。
- 重心とはその周りのモーメントが0になっている点である。
- 重心の公式はモーメントが0になる点を探すことで導くことができる!
- 切り抜かれた円盤の重心は
棒で繋がれた2つの物体の重心へと帰着させて考える!
重心、重心っていうけど
重心って結局何なの?