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合成ばね・連結ばねのバネ定数一覧
合成ばね、または連結ばねのばね定数を
結論から述べると次のようになります。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-06-15.19.48.png?resize=509%2C202&ssl=1)
(ばねの数が2つの場合)
これらは暗記するしかないと
思っている人もいるかもしれませんが
そんな必要はありません。
先程の表のようになる
理屈はとても簡単です。
ばね定数の求め方
それではこれからは
上にあげたばね定数を実際に
求めていきます。
これ以降で一貫した
大切な考え方は
複数のばねを
1つのばねに見なしたい
ということです。
これを念頭に読んでいってください。
直列ばねの場合
では最初は直列ばねについてです。
状況としては次のように
質量$m$の物体を
ばね定数が$k_1$であるばね1と
ばね定数が$k_2$であるばね2が
直列に連結している
状態で支えている場合を考えます。
そして、今これを次のように
1つのばねに見なしたい
わけです。
ではまず
物体に働く力にだけ
注目してみましょう。
物体には次のように
ばね1からの弾性力と重力
が働き、それらがつり合っています。
そして、ばね1の伸びを$x_1$で表すと
フックの法則よりその弾性力は
$k_1x_1$で表されます。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-19.44.01.png?resize=527%2C297&ssl=1)
そのため物体に働く力のつり合いから
$$\large k_1x_1=mg\tag{1}$$
が得られます。
これがばね1と物体において
成り立っている式です。
次にばね2も含めて
考えてみましょう。
ばね2は次のように
ばね1と物体からなる部分全体を
その弾性力によって支えています。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-20.00.50.png?resize=494%2C349&ssl=1)
ばね2の伸びを$x_2$で表します。
すると次図のように
赤枠で囲まれる部分に
働く力のつり合いから
$$\large k_2x_2=mg\tag{2}$$
が得られます。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-20.14.30.png?resize=501%2C386&ssl=1)
なぜなら
バネの質量は
無視していい
(ほど小さい)
からです。
そのため
ばね2が支える質量というのは
物体の質量だけで済みます。
ばねが関わってくる問題には
基本的に問題文中に
「ばねの質量は
無視できるとする」
や
「ばねは十分軽いとする」
という注意書きがあり、
バネの質量を気にすることは
ないので安心して無視してください。
こうして次の2つの式が得られました。
$$\large k_1x_1=mg\tag{1}$$
$$\large k_2x_2=mg\tag{2}$$
ここからさらに
上の2つの式を次のように変形します。
$$x_1=\frac{mg}{k_1}\tag{1’}$$
$$x_2=\frac{mg}{k_2}\tag{2’}$$
この式を覚えておいてください。
では初めに述べたように
2つのばねを1つのばねに
置き換えていきます。
それを行うにあたり
合成したばね定数を
$$\Large k_c $$
とします。
$k_c$のcは
Combined string
(直訳:組み合わせたばね)
の頭文字を意味しています。
「Combine」(組み合わせる)
という単語も合わせて
覚えれば一石二鳥です!
では今、この1つに合成した
ばねの伸びはいくらでしょうか?
それは単純にばね1とばね2の伸びを
足し算してあげればいいので
$$\large x_1+x_2$$
になります。
それゆえこのばねにおいては
フックの法則から
次の式が成り立ちます。
$$\large k_c(x_1+x_2)=mg\tag{3}$$
ここに先ほどの$(1’)(2’)$式を
代入しましょう。
すると
\begin{align}
k_c(x_1+x_2)&=mg\\
\\
k_c\Big(\frac{mg}{k_1}+\frac{mg}{k_2}\Big)&=mg\\
\\
k_c\Big(\frac{1}{k_1}+\frac{1}{k_2}\Big)&=1\\
\\
\frac{1}{k_1}+\frac{1}{k_2}&=\frac{1}{k_c}
\end{align}
と、このように得たかった
直列ばねについての関係式
$$\Large \frac{1}{k_c}=\frac{1}{k_1}+\frac{1}{k_2}\tag{4}$$
が得られました。
また、先程の(4)式を変形することで
$$\large k_c=\frac{k_1k_2}{k_1+k_2}$$
も得られます。
直列ばねを横向きにおいた場合はどうなるのか??
先程までは次のような
直列ばねを考えてきました。
そのため次のような
バネを横に置いた場合
にも成り立つのかと不安に
思う人もいるかもしれません。
もちろんこの場合でも
同様に成り立ちます。
それを証明するためには
次のように力$F$で引っ張られている
状況を考えるといいです。
すると上と同様に、
各ばねが
何を引っ張っているのか
をちゃんと意識し
力のつり合いを考えることで
$$x_1=\frac{F}{k_1}$$
$$x_2=\frac{F}{k_2}$$
が得られ、最終的に
$$\Large \frac{1}{k_c}=\frac{1}{k_1}+\frac{1}{k_2}$$
という同じ式を得ることができます。
不安な人は実際に
自分で手を動かして
考えてみてください。
並列ばねの場合
並列ばねでは
状況として次のような
ばね定数が$k_1$であるばね1と
ばね定数が$k_2$であるばね2が
並列に
物体とつながっている
場合を考えます。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-20.44.40.png?resize=477%2C275&ssl=1)
そして今、次のようにこれを
1つのばねに見なしたい
わけです。
今、ばね1もばね2も
並列につながっているため
ばねは同じだけ伸びています。
そしてその伸びを$x$としましょう。
するとばね1による力は
フックの法則から
$$\large k_1x$$
また、ばね2による力は
$$\large k_2x$$
と表されます。
そして今、直列の場合と違って
2つのバネは
直接物体に力を及ぼします。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-21.02.41.png?resize=461%2C283&ssl=1)
それゆえ物体に働く力$F$は
この2つを単純に足し合わせたものになります。
$$\large F=k_1x+k_2x=(k_1+k_2)x$$
それゆえ、今
物体に働く力のつり合いから
$$\large (k_1+k_2)x=mg\tag{5}$$
が成り立ちます。
この(5)式は覚えておいてください。
では次に、
1つのばねだと
見なした場合
について考えます。
直列の場合と同様に
このばねのばね定数を
$$\Large k_c$$
としましょう。
そして今
このばねの伸びは
2つのばねと同じく$x$です。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-22.20.11.png?resize=448%2C336&ssl=1)
そのため物体に働く力のつり合いから
$$\large k_cx=mg\tag{6}$$
が得られます。
そして(5)式と(6)式を
比べることにより、容易に
$$\Large k_c=k_1+k_2$$
となり、得たかった
並列ばねの関係式が得られました。
サンドイッチばねの場合
サンドイッチ型のばねの場合は
状況として次のような
ばね定数が$k_1$であるばね1と
ばね定数が$k_2$であるばね2が
物体の両端に
つながっている
場合を考えます。
そして今、これを次のように
1つのばねに見なしたい
わけです。
それでは考えていきましょう。
まず2つのばねの長さは
自然長にあると考えます。
そしてこの状況から
物体に右向きの力$F$を加え
$x$だけ右に物体をずらす
ことにしましょう。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-22.46.56.png?resize=533%2C233&ssl=1)
するとばね1では
より伸びようとする
力$k_1x$
が左向きに働き
ばね2では
より縮もうとする
力$k_2x$
が左向きに働ことになり
全体として
$$\large k_1x+k_2x=(k_1+k_2)x$$
の力が左向きに働きます。
そのため力のつり合いから
$$\large F=(k_1+k_2)x\tag{7}$$
が成り立ちます。
この(7)式を覚えていてください。
では次に、
1つのばねだと
見なした場合
を考えます。
これまでの場合と同様に
このばねのばね定数を
$$\large k_c$$
としましょう。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-03-22.31.29.png?resize=439%2C392&ssl=1)
そして今、力$F$を加えて
$x$だけ右に物体をずらすので
力のつり合いから
$$\large F=k_cx\tag{8}$$
が得られます。
この(7)式と(8)式を比べると
容易に
$$k_c=k_1+k_2$$
となり、得たかった
サンドイッチ型のばねの
関係式が得られました。
実際に例題を解いてみる
ここまでで
次の関係式がなぜなりたつか
はわかってもらえたでしょう。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/05/スクリーンショット-2021-05-06-15.19.48.png?resize=532%2C211&ssl=1)
ここからはこの関係式を用いて
実際に例題を解いてみましょう。
問題を解いていく過程では
いきなり3つ以上のばねを
1つのばねだとみなすのではなく
2つのばねを
1つのばねだとみなす
ということに注意してください。
問題
次の合成ばねのばね定数をもとめよ。
解説
この問題には3つのばねがありますが
最初に述べたように
3つのばねを1つにみなす
ということはしないでください。
考えるべきは
2つのばねを1つにみなす
ことです。
それではまず次の部分に注目します。
これは
2つのばねが
並列につながれている
と考えることができます。
それゆえ次の関係式
$$\large k_c=k_1+k_2$$
を用いて、この2つのばねを
1つのばねと見なした場合の
ばね定数を$k’$とすると
$$\large k’=k_1+k_2$$
となり、次の図のようにできます。
これでばねが1つ減り
2つのばねが
直列につながっている
とみなせるようになりました。
直列につながっているので
次の関係式
$$\Large \frac{1}{k_c}=\frac{1}{k_1}+\frac{1}{k_2}$$
が使えます。
最終的に求めたいばね係数を$k$とし
先程の関係式を使うと
$$\large \frac{1}{k}= \frac{1}{k_3}+\frac{1}{k’}$$
変形して
$$\large k=\frac{k’k_3}{k’+k_3}$$
が成り立つので、
先ほど求めた$k’$を代入し
変形して、最終的に$k$は
$$\large k = \frac{(k_1+k_2)k_3}{k_1+k_2+k_3}$$
が得られます。
これが答えになります。
繰り返しますが、
ちゃんと答えに
たどり着くためのポイントは
2つのばねを
1つにみなす
ことを徹底し、絶対に
3つ以上のばねを
いきなり1つにしない
ことです。
冷静に2つ→1つと考えていけば
簡単に解けます。
まとめ
それでは今回のまとめです。
- 直列ばね、並列ばね、
サンドイッチ型ばねのばね定数は
自分で求めることができるようなろう! - 問題を解くときは
2つのばねを1つのばねに
冷静に変換する - 決して3つ以上のバネを
いきなり1つに変換しようとしないように!
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