高校物理のための『エネルギー保存則の公式』の導出

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エネルギー保存則の公式の導出

今回は運動量保存の式と同じように
多くの人がただ暗記している

エネルギー保存則の公式

を導出していきます。

これも全ては
運動方程式から始まります。

そこでまず運動方程式を用意しましょう。

$$\Large m\ddot{x} = F $$

この時力$F$一定です。

補足
この$\large \ddot{x}$の記法が
よくわからないという方は
こちらの記事の最後の方を参考にしてください。

微積物理で唯一暗記すべき式『運動方程式』について

2020年9月20日

次に、理由はともかく
とりあえず$\dot{x}$
運動方程式の両辺に掛けましょう。

$$\Large m\ddot{x} \dot{x} = F\dot{x}$$

この状態で、力積の場合と同様に

両辺を時間$t$で定積分

していきます。

また今回注目する時間の範囲
力積の場合と同様に
$t_1~t_2(t_1<t_2)$とします。

運動方程式の左辺の変形

すると左辺は次式のようになります。

\begin{equation}
\begin{split}
\Large (左辺)&\Large = \int_{t_1}^{t_2} m\ddot{x} \dot{x} dt\\
mは定数なので&積分の外に出ます。
\\
&\Large =m\int_{t_1}^{t_2} \ddot{x} \dot{x} dt\\
\\
&\Large =m\cdot [\frac{1}{2}\dot{x}^{2}]_{t_1}^{t_2}\\
\\
&\Large =m\cdot (\frac{1}{2}\dot{x}_{t_2}^{2}-\frac{1}{2}\dot{x}_{t_1}^{2})\\
(\dot{x}_{t_1}, \dot{x}_{t_2}はそれぞれ時刻&t_1とt_2における\dot{x}の値を意味する)\\
\\
&\Large =\frac{1}{2}m\dot{x}_{t_2}^{2}-\frac{1}{2}m \dot{x}_{t_1}^{2}\\
&\dot{x}をvで書き直して
\\
&\Large = \frac{1}{2}mv_{t_2}^{2}-\frac{1}{2}mv_{t_1}^{2}
\end{split}
\end{equation}

ここで次の計算に
困惑した方がいるかもしれません。

$$\Large \int \ddot{x} \dot{x} dt= \frac{1}{2}\dot{x}^{2} + C{(積分定数)}$$

そこでこれについて詳しく解説します。

まず

積分は微分の逆の操作

ということを思い出してください。

つまり、積分の結果は

微分すると元にもどる

はずです。

 

そこで先ほどの結果を$t$で微分します。

\begin{equation}
\begin{split}
\Large \frac{d}{dt}(\frac{1}{2}\dot{x}^{2})&=\Large \frac{1}{2} \cdot 2\dot{x} \cdot \frac{d}{dt}\dot{x}\\
\\
&\Large = \dot{x} \ddot{x}
\end{split}
\end{equation}

この計算においては

合成関数の微分

を使いました。

補足
合成関数の微分について
よくわからないという方はこちら

【高校生向け】初心者でもわかる微積物理のための『微分』

2020年9月8日

このようにして次の積分の結果

$$\Large \int_{t_1}^{t_2} m\ddot{x} \dot{x} dt= \frac{1}{2}mv_{t_2}^{2}-\frac{1}{2}mv_{t_1}^{2}$$

が正しいことが確かめられました。

 

運動方程式の右辺の変形

それでは次に右辺の計算に移ります。

\begin{equation}
\begin{split}
\Large (右辺)&\Large = \int_{t_1}^{t_2} F \dot{x} dt\\
この時Fは定数&なので積分の外に出ます
\\
&\Large =F\int_{t_1}^{t_2} \dot{x} dt\\
\end{split}
\end{equation}

ここで次の関係を思い出してください。

つまり速度$\large \dot{x}$
時間$\large t$で積分すると位置$x$になります。

なので先ほどの積分の計算は
$F$が定数であることに気をつけると

\begin{equation}
\begin{split}
\Large (右辺)&\Large=F\int_{t_1}^{t_2} \dot{x} dt \\
\\
&\Large = F[x\small{(t)} \Large  ]_{t_1}^{t_2}\\
\\
&\Large = F(x_{t_2}-x_{t_1})\\
ここでx_{t_1},x_{t_2}はそれぞれ&時刻t_1,t_2における位置を表す\\
\\
&\Large = Fx_{t_2}-Fx_{t_1}
\end{split}
\end{equation}

となります。

 

右辺と左辺をつなげると、、

以上のようにして求めた
左辺と右辺を改めてつなげます。

すると

$$\Large \frac{1}{2}mv_{t_2}^{2}-\frac{1}{2}mv_{t_1}^{2}= Fx_{t_2}-Fx{t_1}$$
$$\large 移項して整理すると$$
$$\Large \frac{1}{2}mv_{t_2}^{2}-Fx_{t_2} = \frac{1}{2}mv_{t_1}^{2}-Fx_{t_1}$$

というようになります。

この式がまさに

エネルギー保存則の公式

になります。

しかし腑に落ちない方も多いのではないでしょうか。

 

おそらくそれは先ほどの式が
特に$\textcolor{red}F$の部分に関して
見慣れたものと少し違うからです。

そこで次ではよくある具体例を考えます。

 

自由落下のエネルギー保存

自由落下において物体に働く力とはなんでしょうか。

そう。重力です。

その大きさは

$$\Large mg$$

で表されます。

 

しかし、次の記事で述べたように

物理では方向が大事

です。

微積物理における3つの重要事項

2020年9月14日

そして自由落下においては
基本的に地面を0とし、鉛直上向きを正とした
次のような座標が設定されます。

つまり力$F$について

$$\Large F=-mg$$

となります。

これを運動方程式に代入すると

$$\Large m\ddot{x} = -mg $$

となります。

ここから先ほどと同じように
時間の範囲を$t_1~t_2(t_1<t_2)$
として時間で積分すると

$$\Large \frac{1}{2}mv_{t_2}^{2}-\frac{1}{2}mv_{t_1}^{2}= -mgx_{t_2}+mgx_{t_1}$$

となります。

これを移項して

$$\Large \frac{1}{2}mv_{t_2}^{2}+mgx_{t_2} = \frac{1}{2}mv_{t_1}^{2}+mgx_{t_1}$$

これだと見覚えがあるでしょう。

この式において右辺には時刻$t_2$のもの
左辺には時刻$t_1$におけるもの
まとまっていることに注意です。

つまりこの場合、例のごとく

$$\Large E= \frac{1}{2}mv^{2}+mgx $$

と書かれる力学的エネルギー

時間と共に変化せず
常に一定

ということが言えます。
ただし摩擦など余計なものがない場合

以上のように一見覚えるしかないように見えた
エネルギー保存則の公式
ちゃんと導けるのです(!!!!)

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