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斜面への斜方投射の問題
今回考えるのは次のような問題です。
次の図に示すような
水平から$\theta$だけ傾き
地面に固定された斜面がある。
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/04/スクリーンショット-2021-04-30-16.55.01.png?resize=610%2C340&ssl=1)
この斜面上の点Oから
斜面に対する打ち上げの角度を
$\theta’$として斜面の上に向かって初速度$v_0$で
物体を打ち出したところ
点Aで斜面に衝突した。
この時次の問いに答えよ。
- 物体を打ち上げてから
点Aにおいて
斜面に衝突するまでに
要する時間を求めよ。- 点Oと点Aの間の距離を求めよ。
- $\theta=\frac{\pi}{4}$に固定した時
点Aで物体は斜面に対して
垂直に衝突した。この時の斜面に対する
打ち上げの角度$\theta’$を用いた
$\tan\theta’$を求めよ。
斜方投射の問題に斜面が絡んだ
複雑な問題に見えるかもしれません。
しかし冷静に分解していけば
どうということはありません
働く力を考え、座標を取る
今回考えるべき力
それでは問題の図において
物体に働いている力
は何でしょうか??
今回働いている力は
重力です。
それ以外に力は働いていないので
注意してください。
そして重力とは
みなさん経験的に知っているように
鉛直下向き
に働きます。
それ故、物体の質量を$m$として
図に重力を書き込むと
次のようになります。
座標を取る
では今回どのような座標を
取るといいでしょうか。
まず復習ですが、
斜面上の運動を考える時は
次の図のように
斜面に平行な軸と
斜面に垂直な軸からなる座標
が最適でした。
また、斜方投射を考える時には
つぎの図のように
鉛直上向きの軸と
水平方向の軸からなる座標
が最適でした。
今回の問題では
斜面と斜方投射が一緒になっているので
取るべき座標は先ほどあげた2つの座標を
足して2で割ったような座標になります。
そのような座標はつぎのようなものです。
ここで
![](https://i0.wp.com/high-school-physics.com/wp-content/uploads/2021/03/pose_shock_man.png?w=728&ssl=1)
と言う人がいるかもしれません。
そのような人は
力は2つの方向に
分解できる
ということを思い出してください。
つまり次のように
重力は軸に平行な
2つの力に分解できる
というわけです。
このように力は
自分の好きな方向に
分解できる
ことはしっかり
覚えておきましょう。
運動を分解する
先ほどは力を分解し
座標を設定したので
今度は
運動を分解
していきましょう。
$x$軸方向の運動
まず$x$軸方向の運動についてです。
$x$方向に働く力$F_x$は
重力を分解したもののうち
$x$方向を向いているものなので
$$\large F_x=-mg\sin\theta$$
となります。
このことを念頭に
物体の運動を
$x$軸に投影
してみましょう。
すると
となります。
上図で物体には
負の方向に力が働き
$x$軸にそって減速していきます。
つまり物体はx軸にそって
負の加速度で
等加速度運動
をするわけです。
運動方程式を立てると
その加速度$a$は
\begin{align}
ma&=F_x\\
\\
つまり\\
\large ma&=\large -mg\sin\theta\\
\\
\large a&=\large -g\sin\theta
\end{align}
となります。
$y$方向の運動
次に$y$軸方向の運動についてです。
$y$方向に働く力$F_y$は
重力を分解したもののうち
$y$方向を向いているものなので
$$\large F_y=-mg\cos\theta$$
となります。
このことを念頭に
先ほどと同様に
物体の運動を
$y$軸に投影
してみます。
すると
となります。
上図からわかるように
物体は$y$方向に投げ上げられ
その後落下してきます。
つまり物体は$y$軸にそって
鉛直投げ上げ運動
をするわけです。
ただ、今の場合その加速度は
重力速度$g$ではありません。
運動方程式を立てると
その加速度$a$は
\begin{align}
ma&=F_y\\
\\
つまり\\
\large ma&=\large -mg\cos\theta\\
\\
\large a&=\large -g\cos\theta
\end{align}
となります。
さぁこれで準備は整いました。
あとはこれまで学んだ
いろんな運動の公式を
組み合わせていくだけです。
問題を解いていく
- 物体を打ち上げてから点Aにおいて
斜面に衝突するまでに要する時間を求めよ。 - 点Oと点Aの間の距離を求めよ。
- $\theta=\frac{\pi}{4}$に固定した時
点Aで物体は斜面に対して垂直に衝突した。
この時の斜面に対する
打ち上げの角度$\theta’$を求めよ。
ではこの問題を解いていきましょう。
以下では等加速運動、また
鉛直投げ上げ運動そのものについては
詳しく解説しないので、自身のない方は
以下を参照してください。
問①斜面に衝突するまでに要する時間
斜面に衝突するということは
上で設定した座標において
再び$y=0$に戻って来る
ことを意味します。
そして$y$方向の運動は
鉛直投げ上げ運動に
等しかったのでした。
つまりこの問題は$y$方向の
鉛直投げ上げ運動において
戻って来るまでに
要する時間
を求めれば解けることになります。
今の場合、$y$方向の加速度は
$-g\cos\theta$となるので
次の等加速度運動の公式
$$y=v_0t+\frac{1}{2}at^2$$
に初速度として$v_0\sin\theta’$を
加速度として$-g\cos\theta$
を代入し、またy=0とおくことで
\begin{align}
0&=v_0\sin\theta’\cdot t -\frac{1}{2}g\cos\theta \cdot t^2\\
\\
0&=t(2v_0\sin\theta’-g\cos\theta \cdot t)\\
\\
&故に、\\
t&=0,\frac{2v_0\sin\theta’}{g\cos\theta}
\end{align}
最終的に求める答えは
$$\large t= \frac{2v_0\sin\theta’}{g\cos\theta}$$
となります。
(t=0は初期時刻であり、求めたいものでないことは明らか)
問②点Oと点Aの間の距離
これを知るためには
$x$方向の運動を考える
必要があるのは明らかでしょう。
そして$x$方向の運動は
(負の加速度の)
等加速度運動
であり、その加速度は
$-g\sin\theta$です。
また、その初速度は
$v_0\cos\theta’$です。
そのため$x$軸上の位置は
等加速度運動の次の公式
$$x=v_0t+\frac{1}{2}at^2$$
に、先程の加速度と
初速度を代入して
$$x=v_0\cos\theta’\cdot t- \frac{1}{2}g\sin\theta\cdot t^2$$
と表されます。
また斜面に落下するまでの時間は
問①で求めたので
その時間を上式に代入すれば
OAの距離が得られることになります。
実際に代入すると
\begin{align}
x&=v_0\cos\theta’\frac{2v_0\sin\theta’}{g\cos\theta}- \frac{1}{2}g\sin\theta \Big(\frac{2v_0\sin\theta’}{g\cos\theta}\Big)^2\\
\\
&=\frac{2v_0^2\sin\theta’}{g\cos^2\theta}\Big(\cos\theta \cos\theta’ – \sin\theta\sin\theta’\Big)\\
\\
&三角関数の和積の公式より\\
\\
&=\frac{2v_0^2\sin\theta’\cos(\theta+\theta’)}{g\cos^2\theta}
\end{align}
よって最終的にOAの距離は
$$\large OA=\frac{2v_0^2\sin\theta’\cos(\theta+\theta’)}{g\cos^2\theta}$$
と求まります。
問③$\tan\theta’$の値
改めて状況を整理します。
この場合斜面の角度$\theta$は
$\theta=\frac{\pi}{4}$です。
つまり次のようになります。
では
斜面に垂直に衝突した
とはどういうことでしょうか。
これを言い換えると
衝突の際
$x$方向の運動はない
ということなります。
そしてさらに言い換えると
衝突の際
$x$方向の速度は0であり
$y$方向の運動しかない
ということになります。
つまり問①で求めた次の時間
$$t= \frac{2v_0\sin\theta’}{g\cos\theta}$$
だけ時間が経過すると
物体の$x$方向の速度$v_x$
が0になっていればいいわけです。
等加速度運動の公式から
$$v_x=v_0+at$$
であるので、ここに
上で述べた時間$t$、
初速度$v_0\cos\theta’$、
加速度$-g\sin\theta$
また、$v_x=0$、$\theta=\frac{\pi}{4}$を代入していくと
\begin{align}
0&=v_0\cos\theta’-g\sin\frac{\pi}{4}\Big(\frac{2v_0\sin\theta’}{g\cos\frac{\pi}{4}}\Big)\\
\\
0&=v_0\cos\theta’-2v_0\sin\theta’\\
\\
\frac{\sin\theta’}{\cos\theta’}&=\frac{1}{2}\\
\\
\tan\theta’&=\frac{1}{2}
\end{align}
よって求める$\tan\theta’$は
$$\large \tan\theta’=\frac{1}{2}$$
だとわかります。
まとめ
それでは今回のまとめです。
- 斜面への斜方投射を考える際は
力と運動を2つの方向に分解して考える! - 2つに分解した後、基本的な公式を組み合わせていく!
重力と軸が平行ではない
じゃないですか!